ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン予防接種については、平成25年4月から予防接種法に定められた定期の予防接種として実施されています。しかし、平成25年6月14日付け厚生労働省からの勧告により、積極的勧奨(対象者へ個別に通知し接種を勧めること等)を差し控えていました。その後、第72回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和3年度第22回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)において、最新の知見を踏まえ、改めてHPVワクチンの安全性について特段の懸念が認められないことが確認され、接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回ると認められました。これにより、令和3年11月26日付で平成25年通知は廃止され、接種勧奨を再開することとなりました。
また、勧奨再開に併せて、勧奨を差し控えていた期間に接種機会を逃した者(以下キャッチアップ対象者と表記)に対しても接種機会を設けます。対象者には令和4年7月に案内を送付しました。詳細については下記のリンクをご確認ください。
- 子宮頚がん予防ワクチンのキャッチアップ対象者への対応について
- 厚生労働省 ヒトパピローマウイルス感染症のリーフレット(概要版) [PDF形式/3.36MB]
- 厚生労働省 ヒトパピローマウイルス感染症のリーフレット(詳細版) [PDF形式/3.95MB]
子宮頸がんとは
子宮にできるがんは、大きく分けて2種類あります。「子宮頸がん」と「子宮体がん」です。
この2つのがんは、まったく別の病気です。できる場所、原因、なりやすい年齢、進行の仕方などすべてが違います。
そして気をつけたいことは、子宮頸がんの場合、かなり進行するまで自覚症状がほとんどなく、自分ががんにかかっていることに気づきにくい、ということです。
子宮頸がん | 子宮体がん | |
---|---|---|
部位 | 子宮頸部(子宮の入り口) | 子宮体部(子宮本体の内側) |
発症年齢 | 主に30〜40歳代 (20〜30歳代に急増中) |
主に50〜60歳代 (更年期〜閉経後) |
原因 | ヒトパピローマウイルス(HPV) | 主にホルモンバランスの異常 |
がんが進むと、不正出血、血液の混じったおりもの、下腹部の痛みなどが起こります。進行したがんの場合、手術の範囲が広くなったり治療するのも大変です。日本では年間約9,000人が発症し約2,700人が死亡しています。たとえ命を落とすことがなくても、ごく初期のがんを除いては子宮をとることが必要となる可能性もあり、妊娠や出産への影響はもちろん、リンパ浮腫(むくみ)、排尿・排便障害などの後遺症により日常生活に支障をきたすこともあります。
しかし、「前がん病変(がんになる前の段階)」で発見すれば、子宮をとらない簡単な手術で完治できますし、その後は妊娠・出産することもできます。
子宮頸がんは、発がん性のヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの持続的な感染が原因ということが分かっていて、他のがんと違い予防できる病気になってきています。なにより「前がん病変」で発見することが大切です。
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染と子宮頸がん予防ワクチン
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、性交経験のある人なら、誰もが感染する可能性のあるごくありふれたウイルスです。150以上の遺伝子型があるHPVの中で、特に高リスク型(発がん性が高いタイプ)と呼ばれている16型、18型をはじめとした15種類ほどのHPVの感染が問題であり、特に子宮頸がんの約70%は16型と18型、この2つの型の感染が原因とされています。
HPVに感染しても、多くの場合は体の免疫力によりウイルスが自然排出されてしまうのですが、ごく一部が数年〜十数年かけて「前がん病変」の状態を経て子宮頸がんを発症します。高リスク型HPVに感染してがんになる人は、1,000人に1人か2人です。
HPV感染を防ぎ、子宮頸がんを予防するためにつくられたのが子宮頸がん予防ワクチンです。しかし、予防できる高リスク型についてはHPV16型と18型しか含まれていないため、それ以外の高リスク型HPVの感染を予防することはできません。また、接種前に感染している発がん性HPVを排除したり、発症している子宮頸がんや前がん病変の進行を遅らせたり、治療することはできません。
ワクチンの概要
現在国内で接種できるHPVワクチンは、次の2種類です。
- サーバリックス
約15種類の高リスク型HPVのうち、国内外で子宮頸がん患者から最も多く検出されるHPV16型及び18型のウイルス様粒子を含む2価ワクチンで、16型と18型HPVの感染を予防します。 - ガーダシル
HPV16型と18型に、尖圭コンジローマや再発性呼吸器乳頭腫症の原因ともなる低リスク型HPV6型、11型を加えた4価ワクチンで、6型、11型、16型、18型HPVの感染を予防します。 - シルガード9【令和5年4月1日より定期接種対象】
HPV16型と18型に加え、 31型、33型、45型、52型、58型感染を予防します。
接種方法
1.対象年齢
小学6年生から高校1年生に相当する女子
2.標準的な接種期間
13歳となる日の属する年度の初日から当該年度の末日までの間
(中学1年生に相当する年齢です)
3.接種回数
シルガード9(9価)に限り1回目接種が15歳未満の場合は2回接種
それ以外は3回接種
4.接種間隔
【2回接種の場合】
シルガード9(9価)に限り、2回目は初回から5か月以上の間隔をあけて接種(標準的な接種間隔は、初回から6か月後に接種)
【3回接種の場合】
- 2価ワクチン(サーバリックス)を接種する場合
【1回目】 (1か月あける) 【2回目】 (5か月あける) 【3回目】 - 4価ワクチン(ガーダシル)を接種する場合
【1回目】 (2か月あける) 【2回目】 (4か月あける) 【3回目】 - 9価ワクチン(シルガード9)を接種する場合
【1回目】 (2か月あける) 【2回目】 (4か月あける) 【3回目】
サーバリックス・ガーダシル・シルガード9における交互接種について
- HPVワクチンの接種は、原則同じ種類のワクチンで実施します。ただし、サーバリックスまたはガーダシルで既定の回数の一部を完了し、シルガード9で残りの回数の接種を行う交互接種については、医師とよく相談した上であれば、実施して差し支えないこととされています。
- 現時点において、交互接種における免疫原性や安全性に関する懸念は報告されていません。
- サーバリックスまたはガーダシルで接種を開始し、シルガード9で接種を完了する場合は、シルガード9の接種方法に合わせ、1回目と2回目の間隔を1か月以上、2回目と3回目の間隔を3か月以上あけて接種します。
5.接種費用
無料
6.接種場所
埼玉県接種協力医療機関
- 比企医師会管内接種協力医一覧表 [PDF形式/340.71KB]
- 埼玉県住所地外定期予防接種相互乗り入れ接種協力医名簿(埼玉県医師会)
7.接種方法
接種を希望される方は町保健センター(049−296−2530)までご連絡ください。予診票をお渡しいたします。
その後上記受託医療機関に予約してください。
当日医療機関へは母子健康手帳をご持参ください。
県内相互乗り入れ医療機関で接種を希望する方は、保健センターから予診票をお渡ししますのでそれをお持ちください。
比企医師会管内医療機関には予診票を置いてあります。
予約をしたからといって無理をせず、当日の体調により接種を受けるか決めてください。
予防接種を受けることができない方
- 明らかに発熱している方(37.5℃を超える発熱)
- 重篤な急性疾患にかかっている方
- 子宮頸がんワクチンの成分または破傷風トキソノイドによりアナフィキラシーを起こしたことのある方
アナフィラキシー : 接種後30分以内に出現する呼吸困難や全身性のじんましんなどを伴う重いアレルギー反応 - その他、かかりつけの医師に予防接種を受けないほうがいいといわれた方
予防接種ができるかどうかを医師に相談しなければならない方
該当する方は、接種することができるかどうか慎重な判断を必要とすることから、専門性の高い医師とよく相談してください。
- 心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害等の基礎疾患を有する方
- 予防接種後2日以内に発熱した方、及び全身性発疹等のアレルギーを疑う症状をおこしたことがある方
- 過去にけいれんの既往のある方
- 過去に免疫不全の診断がされている方及び近親者に先天性免疫不全症の方がいる方
- 接種する接種液の成分に対してアレルギーをおこすおそれのある方
接種後の注意
- 血管迷走神経反射として失神があらわれることもあるので、失神による転倒を防止するため接種後の移動には
保護者等が腕を持つなどして付き添ってください。
血管迷走神経反射 : 極度の緊張状態や注射などの痛みにより、自律神経が刺激され、全身の血管床が拡張することにより脳血流が低下し、顔面蒼白、徐脈、血圧低下、失神といった反応が起こること。 - 接種後30分程度、体重を預けられるような場所に座って、立ち上がらず、状態を観察してください。
- 接種後は、接種部位を清潔に保ち、接種当日は過激な運動を避けるよう注意してください。
副反応
どんな予防接種にも副反応があります。医師とよくご相談ください。
なお、副反応に関する詳細情報は、下記外部リンク先を参照願います。
参考:子宮頸がん予防接種に使用するワクチン
- サーバリックス ワクチン添付文書 [PDF形式/559.39KB]
- ガーダシル ワクチン添付文書 [PDF形式/838.58KB]
予防接種健康被害救済制度
定期の予防接種による副反応が原因で病気になり治療が必要になった、又は障害が残る状態になったなどの健康被害が生じた場合には、予防接種法に基づく補償を受けることができます。
ただし、その健康被害が予防接種によって引き起こされたものか、別の要因によるものかどうかの因果関係は、予防接種・感染症医療・法律等、各分野の専門家からなる国の審査会において審議されます。その結果、予防接種によるものと認定された場合に、その健康被害の程度等に応じて医療費、医療手当、障害時養育年金、障害年金、死亡一時金、葬祭料などの区分により、法律で定められた金額を町が支給します。
該当すると思われる方は、診察した医師、町保健センターまでご相談ください。
20歳を過ぎたら定期的に検診を!
子宮頸がん予防ワクチンは有効な予防手段ですが、子宮頸がんの原因のすべてには対応できません。そこで、定期的な子宮頸がん検診を受けることが大切になってきます。国の推奨する「細胞診検査(変化した細胞を見つけ出す検査)」だけでは「前がん病変」を正しく診断できないことがあります。しかし「細胞診」と「HPV検査」2つの検査を併用すれば、ほぼ100%「前がん病変」を発見することができます。
鳩山町では、20歳以上の方を対象に子宮頸がん集団検診・個別検診を実施しています。個別子宮頸がん検診では30歳以上の方全員に「細胞診」と、国内でも先駆的である「HPV検査」併用検診を実施し、検査の精度向上に努めています。個別子宮頸がん検診は、年間を通して指定医療機関(下記リンク参照)で受診していただけます。
20歳を過ぎたら定期的に検診を受けることをお勧めします。
関連情報
- 厚生労働省 子宮頸がん予防ワクチンに関するQ&A [PDF形式/229.57KB]